福岡地方裁判所小倉支部 昭和40年(ワ)51号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、被告会社が前記自動車を所有していたことは争がないが、被告会社は被告須子が前記自動車を無断で私用したものであるから、自動車損害賠償保障法第三条にいう自動車の運行にあたらない事由がある旨主張する。成立に争のない甲第八、九号証、証人園田修の証言、被告須子本人尋問の結果によれば、被告須子は被告会社北九州営業所で登録業務係をしていたが、本件事故当日私用のため無断で前記自動車を持出し運転し、知人と会つたうえ飲酒に行つたことが認められるけれども、被告須子は被告会社の従業員であつて、その基礎のうえに前記自動車を無断で運転したものであり、被告須子の右運転は保有者たる被告会社の支配に由来するものであつて、すぐに保有者に返還されるべき予定のもとにされているものであるから、被告会社のための運行というに妨げなく、被告会社の保有者としての責任を排除するものではないと解することができる。
被告会社は、前記法条但書の免責事由の主張をするけれども、前叙認定のように被告須子に過失があることが認められるから、他の要件の成否を判断するまでもなく、前記抗弁は失当たるを免れない。
そうすると、被告会社は前記法条本文に基づく責任があるので、被告須子が前記不法行為により原告に加えた損害を同被告と連帯して賠償すべき義務があるというべきところ、<中略>
そうとすれば、前記収入喪失金五四二、四九六円、純収益喪失金一三九、〇六〇円、慰藉料金三〇〇、〇〇〇円の合計は金九八一、五五六円となるところ、原告が失業手当金合計金一一四、〇〇〇円の支払を受けたことは原告の自認するところであり、被告須子が原告に対し生活費等として金一〇一、〇〇〇円を支払つたことは当事者間に争がないので、以上の合計金二一五、〇〇〇円を前記金九八一、五五六円から控除すると、金七六六、五五六円となること明かである。
二、そこで被告等の過失相殺の抗弁について判断するに、<証拠>によれば、原告は本件事故当日知人宅二カ所で二合位飲酒したうえ自転車に乗つて進行してきたが、本件事故現場の交差点を横断する際被告須子の運転する車が相当速く進行してくるのを認めながら充分に安全を確認しないで横断したことが認められるけれども、前述認定のように、被告須子は免許がないうえに、飲酒したのであるから運転を中止すべきであるのに運転をしたものであつて過失が大きく、本件事故は被告須子の許されない運転に起因して発生したものであることを考慮して、原告の過失は損害額を定めるについてはこれを斟酌しないことを相当と認める。よつて前記過失相殺の抗弁は容れないことにする。(奥輝雄)